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たった13分の(あらすじ加筆しました)

偶然TVでとてもいい映画を観たので、日記を書こうと思ったけどなんだかだらだらあらすじを書いているうちに、書かない方がいいような気がしてきて、じゃせめてその映画のことを書いた記事でもあれば載せようかと探して読んでみたけど、ファンタジックな映画だとか奇妙な現実の世界だとか信じられない説明がついていて、更には感想がアップしてあるブログを読んだら私にしてみればとんでもない能天気な感想だったり、逆に、いや待てよこんな感想を抱く私は邪悪な人間なんだろうかと思ってしまったりで、これまた書けなくなりました。

でも、機会があったらぜひ観てみていただきたい。

『おもちゃの国 Toyland』

と言うたった13分の短編で、
第二次世界大戦中のドイツ人一家とユダヤ人一家の物語です。

この映画を表現するのにファンタジックとか奇妙とかいう言葉は全然相応しくないと思う。

<あらすじ>
マリアンは小さい息子ハインリヒと暮らすドイツ人。
第二次世界大戦下、ユダヤ人の収容所送りが始まって
近所のユダヤ人たちが姿を消し始めていた。
ハインリヒの親友隣りの家のデビッド一家ももユダヤ人。
明日は収容所へ送られると言う日も二人は仲良くピアノを弾く。
あの人たちはどこへ行くの?と尋ねるハインリヒに
本当のことは話せず『おもちゃの国よ』と答えるマリアン。
『じゃ僕も行きたい』と言うハインリヒだがマリアンは取り合わない。
洋服を鞄につめてベッドに隠すハインリヒ。
でも、マリアンに見つかって取り上げられる。
翌日、ドイツ軍の車が迎えに来て一家は乗り込むが
一緒に行こうとしたハインリヒはもちろん乗せてもらえない。
とぼとぼと歩いて行くハインリヒ。
外出から帰ったマリアンは、部屋にハインリヒがおらず鞄もないことに気づき慌てて駅へ向かう。
ドイツ人である証明書を見せ、事情を話して列車を探すマリアン。
しかし、列車の中にはハインリヒはおらず隣りのユダヤ人一家がいた。
数秒、じっと見つめ合うマリアンとデビッドの両親。
意を決したように、マリアンはデビッドに手を延ばし声をかける

『ハインリヒ』

黙って息子を押し出す両親、ドイツ兵に助けられ列車を降りるデビッド。
二人はマリアンの家へ向かう。
その夜、マリアンの家の窓辺にはマリアン・ハインリヒ親子とデビッドの姿があった。


この映画がここでおしまいのハッピーエンドではないことは想像に難くない。
この両親が送り込まれた収容所でどんな目に遭うか私たちは知っている。
そして、その先に何が待っているか、も。
多分この両親も自分たちの運命を知っている。
ここで別れたらもう二度と生きて息子に会うことはないであろうとことを。
でも、いやだからこそ、他人であるマリアンに息子を託した。
息子だけでも生きて欲しいと。

しかし、現実にはこの先デビッドが無事ドイツ人の男の子として生きていけるとは思えない。
駅から立ち去るマリアンたちの後ろでドイツ軍の軍人たちが話し合っている。
『どうしてこんな不手際が起きたのかしっかり調べろ』
しっかり調べれば、マリアンの嘘などすぐにばれてしまう。
下手をすれば、ユダヤ人をかくまった咎でマリアンまで逮捕されてしまうかもしれない。

すべてがうまく行くとは考えられない、自分にも類が及ぶかもしれない、それでもなお、手を差し伸べずには居られなかったマリアンの心。
一縷の望みを託して息子をマリアンに渡した両親。
見つめ合う短い時間の中でどれほどの無言の会話が交わされたことか。

それを考えると私は息が詰まるようで、いても立ってもいられなくなるようで、配給会社のHPに載っていた『厳しい現実から我が子を守る母の姿をファンタジックに描いた』があまりにも的外れな表現だとしか思えない。
これはファンタジーではなく60余年まえに現実に行われていたことだ。
これを子供を守る母の勇気ある行動、の映画だと思うことは私にはとてもできない。

by yuming0117 | 2010-06-14 14:33 | | Comments(0)

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